物語のある社長インタビュー第1回

株式会社自分磨き 代表取締役
銀座みゆき通りデンタルクリニック、銀座キッズデンタルパーク院長
古田 博久様

10年間変わらないスタッフ!
驚異の定着率と企業理念の浸透・実践

物語のある社長インタビュー、第1回は歯科医の古田博久先生。
銀座みゆき通りにあるクリニックは「抜かない歯の矯正」がコンセプトです。開業10年目の想いと、2014年、歌舞伎座タワーにオープンした「子供向け予防歯科について、経営のヒントをお聞きしました。

取材日:2015年5月

《物語のある社長インタビュー》株式会社自分磨き 代表取締役 銀座みゆき通りデンタルクリニック、銀座キッズデンタルパーク院長 古田 博久様

▼初めてお会いした時に驚いたのは社名でした。歯医者さんで「株式会社自分磨き」はインパクトありますよね

社名を模索しているとき、「自分が輝くと周りを照らすことができる。みんなも明るくなって輝ける。自分を磨くことは周りのためにもなるんだよ」という話を聞いたんです。それで「自分磨き」にしようと。たしかにインパクトありますね(笑)。

▼なぜ株式会社に?

歯科医院をオープンしてから、予防歯科セミナーや表情筋トレーニング教室運営など、啓発活動のためにつくりました。医者が商売としてセミナーをやるのは禁止なんですよ。相談を受けてそれに答えるのはいいけど、有料セミナーや物販はダメ。どうせならきっちり分けてやりたいと株式会社にしました。

▼クリニックを開業されて10年。ターニングポイントはどこでしたか?

2011年の本の出版が大きな転機になりました。全国の書店や図書館に置いてもらったことで、本を読んで来院してくれる人が増えたんです。関東甲信越はも ちろん、東北、北海道、九州など、ネット検索だけでは考えられない地域から来てくださる。集客に困っていた時期でもあったので、出版の効果は絶大でした。

▼なぜ出版を?

前々から、「歯を抜いたり削ったりしてキレイにするのではなく、その人本来の自然な歯でキレイにしてあげたい」という想いを伝えるにはどうしたらいいのか、来てくださる患者さん意外にももっと広く伝えたい、それには媒体が必要と考えていたんです。

当時、ブログやニュースレターでコツコツと書き溜めていた記事を形にしてくれたのが知り合いの出版社。本来あるべき歯科医療の姿について、自分の想いを全て詰め込むことができて本当によかったです。

出版は、テレビ出演のきっかけにもなりました。抜かない矯正歯科の立場でコメントがほしいという内容でしたが、本がなかったらこの話もなかったでしょう。 しかし、テレビ効果は一時的なもの。持続的に想いを伝えられる本の宣伝効果は大きいです。実際、本を手にして2年後に来院という患者さんもいらっしゃるん ですよ。

▼以前、スタッフの方を取材させていただきましたが、ずっと同じメンバーですよね?離職率の低さに、何か秘訣があるのでしょうか?

多少の出入りはありましたが、今のメンバーは全員オープニングスタッフ。たしかに離職率は低いほうでしょうね。これといった特別なことはしていませんが、 「しっかり給料を払う、スタッフの話を聞く、毎日顔を合わせたときに会話をする、互いの仕事を尊重する」など、経営者として基本を守ることを大切にしてき ました。

開業の想い、仕事の楽しさ奥深さを、ずっと伝え続けている。これがスタッフに浸透しているのだと思います。

▼どのように想いを伝えているのでしょうか?

一番強く伝え続けていることは、「歯科の仕事は楽しい」ということですね。

これは、私が心の底から本当に感じていることで、スタッフのモチベーションを上げるためにも言わなきゃと思っています。義務感でいっているわけじゃないんですよ(笑)。

例えば仕事中に起きた小さなことでも、「〇〇さんの歯はこうなっているけど、どうしたらいいのかな?」など、いつもスタッフと一緒に考えたり、歯って面白いなって気づいてくれるような話を毎日し続けています。

気づけば、スタッフ皆がだんだん歯科の仕事に興味を持つようになり、さらに人間というものに関心が出てきたんです。すると、人として患者さんと自然に向き 合うようになる。仕事が面白くなって、自ら行動するようになる…そんな姿を見ることで、私も仕事が面白くなっていきました。私自身もスタッフと一緒に成長 してきたのではないかなと思います。

▼昨年『銀座キッズデンタルパーク』を開業されました

小さいころからの予防メンテナンスを別にやりたい、子どもに特化した医院をつくりたい、と以前から考えていたんです。2年前に静岡のキッズデンタルパークを見学に行ったのがきっかけで、こちらでのオープンが具体的になったのは昨年ですね。

▼フランチャイズのひとつと考えていいんでしょうか?

そうですね。コンビニや飲食業のフランチャイズとは少し形態が異なりますが、開業地選びから施工、プロモーション、スタッフ教育、経営コンサルと、諸々 パックに?なっています。大きな決断でしたが、自分一人では、ここまでスピード感のある開業はなしえなかったでしょう。予防歯科はこれからますます需要が 高まっていく分野ですので、今後、私のようなクリニックも増えると思います。

▼キッズデンタルパークで開業したメリットはなんでしょう?

一番のメリットは、「0歳からの予防歯科」という共通理念を持った仲間がはじめから集まることです。

仕事をする上で、違った方向を向いている人たちを同じ方向に向かって歩むよう仕組みを作ったり、教育するのは非常に大変だと思います。しかし、私たちの仲間は、少なくとも、「子どもたちやその家族の歯の健康を守りたい」という想いのある人ばかりです。

はじめから同じ想いを持っているので、さらにその想いを掘り下げていくのもスピードが早いですし、いつも仲間がいるというのは心強いですね。

▼歌舞伎座タワーを選んだ理由は?

誰でも知っている場所、伝統を大切にしている場所から歯科予防の概念を発信していきたいと、考えたからです。歌舞伎座タワーが堅牢な建物であることも理由の一つですね。

私は大阪に住んでいるとき、阪神大震災を、東京では東日本大震災を経験しました。いずれも震源近くではなかったのですが、それぞれ全く違う大きな揺れを経 験しました。医院を構える以上、従業員や患者様の安全を確保するのは当然の義務。ましてや、大切な子どもさんとなると建物の安全性には一層気をつかいま す。

銀座には他にキッズ専門の歯科医院がないので、ここを起点に「治療より予防」の概念が広まっていくといいですね。

▼何歳から通えますか?

いま通っている子どもさんは0歳からですが、できればマイナス1歳、お母さんのお腹にいるときから通ってほしいですね。妊娠中から歯にいいこと悪いことを伝えられればと考えています。

知識はあって悪いことじゃないし、歯に対する意識が高まるだけでも産前産後の生活が違ってくると思うんです。お母さん方にはいろんな知識を身につけてもらいたいです。

▼本院との兼ね合いは?

ここに通っている子たちが成長していって、中学高校生になるまでキッズで面倒をみていければいいと考えています。本院では、大人になったときにその年代に 合わせたメンテナンス、大人向けのメンテナンスをやっていきたいです。生まれてからずっとその子のメンテナンスをしていくのが目標、長い付き合いになって いくといいですね。

もちろん、キッズデンタルに通われる子供たちの保護者の方々にも、本院の高度な歯科医療技術を受けていただけます。お母様やお父様にも、歯を大切にして欲しいですね。

▼集客はどうされていますか?

キッズに関しては、ホームページと都バス内のステッカー広告、あとは紹介ですね。この界隈の方が多いので、クチコミはこれからも増えていくでしょう。というのも、予防歯科がどういうところで具体的に何をやっているのか、ホームページだけでは伝えきれないからなんです。

「子どもが虫歯にならないのはいいに決まっているけど、先生やスタッフは実際どんな感じで接してくれるの?」「子どもが通いたくなるような雰囲気なの?」と、お母さん方の体験談がクチコミに繋がります。

まだまだ予防歯科の概念が浸透していないので、患者数を伸ばすのは大変ですが、若いお母さんたちの意識が変化しつつあるのは事実。「自分の子どもは虫歯にしたくない、早めにいろんなことをしてあげたい」という想いが年々強くなっているのを感じます。

▼固定客の概念はあまりない業界ですが?

「虫歯になったら来てね」という従来の集客方法で固定客化はできません。患者はたまたまその歯医者を見つけて来ただけ。歯が治れば通院しなくなってしまい ます。予防歯科で大切なのは、「自分の歯が一番。大切にしていけば死ぬまでもつんだよ、使えるはずなんだよ」という概念を伝えていくこと。定期健診に繋げ るには、意識を変えていくことから始めないとお話にならないんです。

歯を見せないで笑う、歯を隠すのが奥ゆかしい、とされてきたのが日本の文 化。どうせ隠すからといって歯をおろそかにしていいわけではないですよね。アメリカでは、デートに誘われても「歯医者の予約があるからだめ」と断ります が、日本では歯医者の予約は後回し、優先順位が違うんです。意識を変えるのは難しいですが、この順番が逆になるよう、自分や子どもの体のことを考えるよう になってくれたら嬉しいですね。

▼子どもさんのリピート率はどれくらいでしょう?

今のところ70%です。とくにリピート率が高いのは、他の歯医者でいやな思いをしたお子さんですね。治療の際に、「押さえつけられた、無理矢理やられた」ことがトラウマになっていた子が、「ここならいい、また来たい」と言ってくれる。これほど嬉しいことはありません。

▼リピート率を上げるために具体的にしていることは?

予防歯科では初回の説明と対応が命です。「歯医者に行ったら何か買ってあげる」はない世界ですから、「歯医者は気持ちいいところ、歯をお掃除してくれる気 持ちいいところ、美容院できれいにしてもらうのと同じ感覚なんだよ」というのを、楽しく分かりやすく伝えるようにしています。お母さんには、医院のコンセ プトを丁寧に伝えることですね。

予防は自由診療で保険は使えません。ですから、なるべく安く費用を設定して、皆さんが通いやすいようにもしてい ます。銀座でやっているからといって高額にはできないですよね。月1回2000円ほどで、ブラッシングのレッスンやフロスの使い方など、小さいうちから正 しく使えるように指導していきます。定期検診は3か月に1回。予約の日が近づいたらリマインドハガキを出しています。

▼今後の課題は?

開業して10か月になりますが、これから患者数をどう伸ばしていくかが課題です。

歯のメンテナンスは通うことが大切。1回来て虫歯になりにくくなる魔法はありませんから、継続が重要なんです。そこを分かってもらうのが大変ですよね。予防の概念を伝えていく能力が求められるので、スタッフ教育にもさらに力を入れていかなければと考えています。

▼予防の概念をどんな形で伝えていきたいですか?

いまのところ週1回、0歳~3歳までの親子で一緒に楽しくブラッシング教室をやっているんですが、こういった機会をもっと増やしていきたいです。かわいい セミナールームもありますから、お母さんや妊婦さん向けの勉強会やセミナーを開催して、ホームページやブログ、facebook等で、もっと情報発信して いきたいですね。。

株式会社自分磨きとしては、本の出版や、歯と健康をテーマに音楽やダンスとのコラボなんかもやっていきたいです。

▼バンド活動もされていますよね?

高校時代からドラムをやっているのですが、数年前にバンドを再開しました。今のメンバーは、異業種の集まり。40歳間近でドラム募集の記事を見つけて応募 したんですよ(笑)。メンバーで練習したり、ライブをやったりで、本当に楽しいです。歳をとってもずっとできて、発表の場があるのはいいですよね。

<取材を終えて>

古田先生に初めてお会いしたのは、もう7年前のこと。「人の歯は理由があってそこに生えているんだから、健康な歯を決して抜いてはいけない」と熱く語る姿 は当時のまま。抜かない矯正と予防歯科への想いを、出版や予防歯科医院の開業で形にしてこられた行動力には感服するばかりです。

先生の理念がス タッフの皆さんに伝わっていて、それが患者さんへの対応に表れているのは前々から感じていましたが、10年間メンバーが変わらないのは驚きです。驚異の定 着率のヒントは、「スタッフの仕事に敬意を払っている」という言葉にあり!プロとしてお互いを認め合い、想いを共有し合う姿勢が信頼と向上心を生み、いい 経営に繋がっているんですね。愛されキャラの古田先生。今後のご活躍が楽しみです。