物語ライティングが取材された記事

_D8F7386
2016年12月01日

 

2013年に取材を受けた記事です。

なぜこの会社を興したのか、なぜ「物語」なのか、代表大隈の想いをお読みください。

物語には心を動かす力がある

「物語で日本を元気にしたい」と、ストーリー性を重視した記事コンテンツを企業のWebサイトや営業ツール向けに企画制作する株式会社物語ライティング(本社・千葉県流山市)。全国で活動するライターを組織し、各地の企業から受けた依頼には、地元のライターが対応する仕組み。自らもライター、セミナー講師として活躍する同社の大隈明子代表取締役に読み手を動かすライティングや事業の展開について聞いた。

 

型どおりの導入事例を「ヤラセっぽくないか?」と疑う読み手

――社名にもなっているキーワードの「物語」は、どのようなものなのでしょうか。

大隈:例えば、ITのソリューションを提供する企業が、自社の強みを伝えるときに、どのような情報を発信すればよいか考えてみてください。当然、ソリューションがどのようなものなのか、具体的に伝えようとするしょう。こうした情報は、もちろん不可欠なものです。ただし、ここにさらに「物語」というスタイルの情報をプラスすることで、ソリューションについて実感を伴って理解してもらい、その企業をもっと身近に感じてもらおうというのが、私たちの考える「物語」です。

私たちがWebライティングをお手伝いしているクライアントに、ソフトウェアの開発や販売を手がけるIT企業さんがあります。特に不動産会社をターゲットとし、顧客情報を効率的に管理できるこのソフトを販売しています。私たちは、導入したユーザーである不動産会社さんを訪ねて、取材を行い、インタビュー記事にまとめ、Webサイトのコンテンツとして定期的にアップしています。いわゆる導入事例ですが、ありきたりではありません。

ユーザー企業の社長さんを直撃取材します。創業から今日に至る歩み、ビジネス展開や差別化戦略をおうかがいし、社長さんの思いも語ってもらいます。もちろんソフトを導入して、どう使いこなし、どのように売上が伸びたか、という要素は盛り込みますが、むしろ全体の一部でしかありません。この部分をとうとうと書き連ねてしまうと、どうも鼻に付いてしまいます。読み手は「ヤラセっぽくないか?」と疑ってかかります。その点、このコンテンツは、むしろ同じ不動産業界の方が、興味を持つような創業ストーリーや差別化戦略にクローズアップしていますので、一種の読み物として読んでもらえます。そして、こうした背景情報が伏線となって、導入を検討する企業の方にも、ソフトの有効性を実感してもらうことができるのです。

――そうした取材を重ね、原稿化するには、手間も時間もかかります。

大隈:自分たちの情報を伝えて、人を動かすマーケティングの世界で、コンテンツに最も大切な要素は“真実”だと考えています。これが、たくさんの仕事を通じて試行錯誤を重ね、いろいろな情報の伝え方の効果を検証してたどり着いた私なりの結論です。

例えば、ストーリーマーケティングといった情報発信の方法論の有効性が以前から主張されています。ところが、こうした手法を実践するマーケターには、ストーリーづくりのためには、ある程度はフィクションも許容されると考えている方もいます。私自身、こうした案件の依頼を受け、ゼロから創作して、お客さまの声をまとめたこともありますが、どうもしっくりこないのです。これでよいのか、と思ってしまうのです。

こうした手法の対極にあるのが、例えば、社長ブログのようなコンテンツです。そのコンテンツを読みたいという多くのファンがいて、アクセス数も相当なものです。ところが、文章のテクニックという視点からすると、いろいろ気になる点があります。それでも、社長のキャラクターであったり、経験に裏打ちされた考え方であったり、本質的なところが読み手を引き寄せます。結局のところ、情報発信のアウトプットの形はいろいろあっていいということだと思います。動画ムービーも有効な手法ですし、本質的にはメディアの種類も問いません。

ですから私たち物語ライティングでも、「物語」という独自のコンセプトは貫きながら、いろいろなアウトプット形式に対応するようにしています。最も短い文章は、名刺の裏面に印刷することのできる200字程度のプロフィールです。用途や媒体によってプロフィールを書き分けており、チラシやリーフレット向けは400~500字、Webサイト向けだと700~800字です。ほかにも、代表挨拶やお客様の声、求人用の会社紹介、メルマガといった多様なアウトプットに対応しますが、いずれもストーリー性のある文章にこだわっています。

 

2代目社長に思いの丈を吐き出してもらう

――取材で真実に肉薄するのは、情報を発信する者の理想です。

大隈:もろろん、そう簡単に本音を聞けるというものではありません。創業社長の跡を継いだ2代目の若い社長さんを取材したことがありますが、なかなかズバッとした言い方をされない方だったんですね。社内では、古参の社員にあごで使われていたりして、「あららっ…」ていう感じなんです。どうやらそれも仕方のないことで、数年前にヒラの一兵卒として入社して、父親の引退を受けて、急きょ社長になったばかりだと言うのです。

それでも2代目には、思いがあるわけです。「今はこうだけれども、将来はこうなりたい」「自分は父親とは同じことができないが、こんなことをやっていきたい」と、いろいろ考えている。そこで、そうした思いの丈を思い切って話してもらうことにしたんです。もうすべてを全部、吐き出してもらったんです。そうしてお聞きしたのは、立派なひとつの社長のあり方でした。訴える力のある代表挨拶になりました。後になって、「社員さんたちに、あの代表挨拶を読んでもらえて良かった」と2代目から言われたことを覚えています。

 

「物語」を読んで応募してくる職員の離職率は低い

――「物語」の効果を感じるのは、どんなときですか。

大隈:コンテンツに「物語」を採用した企業のWebサイトからの問い合わせが、何件増えたというのは把握しづらい面もありますが、ひとつわかりやすい例を挙げると、都内のある介護施設さんのお仕事があります。施設の職員がいつもケアしている利用者をお1人ずつ紹介していくWebサイトの連載企画です。

介護の現場というのは、時として壮絶です。取材をしていても、老いるということは、こういうものなのかと身につまされる思いがします。職員が目を離すと、歩き回って、どこかに行ってしまうという徘徊癖のあるお年寄りの場合、手を焼いた職員が、この方の靴を隠してしまうんです。靴がないと外出できないと、徘徊はいったん治まるわけですが、反動が出てしまう。だんだん機嫌が悪くなり、行動が荒んでしまう。そこで、やっぱり靴を返そうということになり、お年寄りがいなくなってしまうことのないように、きちんと職員が対応できるようにしたというのです。そうすると、お年寄りの状況も改善していきました。

こうした現実をコンテンツとすることで、施設にお年寄りを預ける家族に、老いがどういうものであり、介護の現場がどういうものなのかを理解してもらうことができます。また、こうしたコンテンツを見て応募してきた介護職員は、採用後、離職する率がずっと低いそうです。施設運営の中心を担ってくれるような人材も採用できたと喜んでいただきました。

――そもそも「物語」というスタイルに注目されたのは、どうしてですか。

大隈:英文科を卒業したものの、英語に自信が持てなかった当時の私は、卒業してすぐにイギリスに渡って、1年間、英語を学び直しました。イギリスから帰国して留学ジャーナルに就職。今度はフランスを学ぼうと、1年間休職してフランスに留学しました。その後、出産を機に,海外留学の分野を専門とする出版社の仕事を中心にフリーランスのライターとして活動するようになったんです。

当時は、留学に関する情報を得る手段は限られており、現在のようにインターネットで調べてみようという時代ではありませんでした。留学を志す若者が、専門誌を調べて、現地の情報を得ている時代です。私はイギリスやフランスに赴き、日本人留学生を受け入れる学校を何校も取材したものです。校長先生にインタビューしたり、現地に滞在する日本人留学生のホームステイ先を訪問したり、それを留学情報誌の記事として紹介するわけです。

そんな留学ライターの仕事に、帰国した留学生に体験談を語ってもらうインタビューの企画がありました。海外留学から帰ってくると、留学生はきまって人間がひと回り大きくなって、たくましくなります。だから帰国後は、夢を実現するために自分の道を切り開いていくことができるのです。そんなストーリーをつづるのが、私の大好きな仕事でした。今にしても思えば、それが「物語」という今の仕事を始めることになった、ひとつの理由だったことは確かです。

 

完全否 定されてしまった「物語」のスタイル

――そこで、物語ライティングを立ち上げられたのですね。

大隈:ところが、まだ、ここから曲折がありました。留学ライターの世界でも、しだいにWebサイトによる情報発信が主流となってゆき、私の仕事も、紙媒体からWebへとだんだんと比重が移っていったのです。

ところが当時、紙媒体とWebでは、ライティングの仕事に求められるものも違っていました。当時は、Webのコンテンツはじっくり読まれるものではないから、「短く書くことが何より重要だ」と盛んに言われた時期でした。留学先の学校紹介も、とにかく短く書かなければいけません。私が得意とする「物語」のスタイルが完全に否定されてしまったのです。短く、短く書いてしまうと、結局、箇条書きのようになってしまい、どの学校紹介も似たり寄ったりになってしまいます。差別化もなにも、あったものではありません。

そんなとき、あるWeb制作会社さんのサイトに目を留めました。自社のサイトで、社長さんのWeb制作に対する考え方をまとめた文章を公開しているのですが、それは当時の「短く書く」という“常識”ではまったく考えられなかったような長文だったのです。ところが、その文章を読むと、すんなり社長さんの思いが実によく伝わってきます。こうして私が心を動かされたのだから、Webサイトの文章は長くても構わないのだ、「物語」のコンテンツがあってもいいはずだと救われた思いでした。この出来事があって、物語ライティングという新しいコンセプトの会社を立ち上げることを、ためらっていた自分の気持ちを吹っ切ることができました。

 

セミナーではプロフィールを書いてもらい、添削して返す

――ライティングの手法を紹介されるセミナーを開催されています。

大隈:物語ライティングが主催するセミナーだけでも、年間13回ぐらいのペースで開催しています。例えば、企業経営者や個人事業主を対象に、プロフィールや代表挨拶を自分で書いてもらうセミナーがあります。2008年から各地で開催していますが、参加者は通算で1,000人を超えています。セミナーでは、ワークショップ形式で自分の歩みを振り返ってもらい、自分の強みやセールスポイントを整理してもらいます。こうした要素をストーリー性のある物語として文章化していくコツも伝授します。参加者には後日、自分の書いたプロフィールや挨拶文をメールで送ってもらい、添削してからコメント付きで返信しています。

大阪や名古屋といった地方で開催するセミナーは、各地で活動する物語ライティングの登録ライターに講師を務めてもらうようにしています。活動中のライターは私が厳しく審査して選抜した精鋭たち18人です(2013年9月現在)。それぞれの地域の案件には、地元のライターが対応する仕組みです。セミナーを通じて、地域の企業の方と面識ができ、その後、仕事に発展していくケースも少なくありません。

ただしセミナーの開催に力を入れているのには、もっと違う目的もあります。それはできるだけ多くの方にライターという仕事があり、その道のプロがいるということを知ってもらうことです。実は、ライターという仕事は、社会一般で、あまりよく知られていません。広告宣伝やWeb制作の業界では、ライターと言えば、ライティングのプロであるというのが常識です。ところが、一般の方は、タバコに火を付けるライターをまず連想されます。ライティングと聞くと、照明器具のことだと思う。物語ライティングという社名から、照明器具の会社だと勘違いされる方もいます。

マーケティング活動に積極的に取り組んでいる企業でも、実際に、プロのライターを起用するケースは限られています。Webサイトを制作する場合でも、デザインやコーディングといった業務はWeb制作会社に依頼しますが、コンテンツのライティングはマーケティングの担当者や企業の代表者自身がこなさなければならない、という状況がままあります。なかなか思うように文章がまとまらないまま、期限が迫り、切羽詰まった状況に追い込まれ、よそのサイトの真似をしてしまう。代表挨拶がどうも堅苦しかったり、どこかで読んだことのあるような締めくくりになっていたりするWebサイトが多いのは、こうしたやむにやまれぬ事情があったからではないでしょうか。

 

社長さんにお会いするのが楽しくてたまらない

――これから、どのように活動されていくか、抱負をお聞かせください。

大隈:もっと多くの企業に、いろいろな場面で「物語」というスタイルをご活用いただきたいと思っています。全国で活動する登録ライターも、100人を目標に増やしていきたいと考えています。以前からつきあいのあるWeb制作会社やフォトグラファーと連携しながら、クライアントのリクエストに応えています。

もちろん私自身、ライターの仕事をどんどんこなしていきます。私は社長が大好きなんですね。社長にお会いするのが楽しくてたまりません。悩んで、苦労して、やってきた社長さんの話ほど、おもしろく、ためになるものはないからです。取材をしていても、マーケティングや経営の勉強をさせていただいているような気になります。その社長さんにしか語ることのできない「物語」を全国に発信していきたいと考えています。